水難事故の通報
- 海上での事件・事故の通報は118番:海上保安庁に救助や捜索を要請するための電話番号。
- 川や湖、貯水池などの事件・事故の通報は119番:消防車や救急車の出動を要請するための電話番号。
※いずれも問い合わせのための電話番号ではありません。
子供の水難事故の原因は川での水遊びがもっとも多くなっています。しかし、川での水難事故ではライフジャケットを着用することでほぼ死亡事故を防げることもわかっています。
海中転落時の生存率についても、ライフジャケットを着用しているほうが非着用の1.5倍ほど高くなります。こうした水難事故のデータからは、子供にライフジャケットを着用させる効果がはっきりと見えてきます。
かたちばかりのライフジャケットではなく、ちゃんと子供の体重や身体に合ったサイズのライフジャケットを着用しなければ効果が発揮されず、溺れる事故につながります。
この記事では子供の水難事故の原因と、ライフジャケットの効果について解説します。
子供の水難事故の原因
出典:警察庁『水難の概況』※平成27年~令和1年の総計
警察庁生活安全局の資料では、子供の水難事故の原因を見ることができます。(子供とは、中学生以下を指す)
子供の水難事故は、河川での事故が突出しており、原因でもっとも多いのは水遊びとなっています。全年齢では水難事故が海釣り中に多く発生しているのに対して、子供の水難事故は川の水遊びで多発していることがわかります。
川での子供の水難事故は、次のような原因で起こっています。
- 急流に引き込まれて流される。
- 飛び込んだ際に岸壁に身体・頭部を打ち付ける。
- 川底の石や木に足が挟まって溺れる。
- 上流での雨やダム放水による急な増水に巻き込まれる。
- 親が目を離したすきに行方不明になる。
これらの水難事故の大半は、ライフジャケットの着用で防ぐことができます。川はもとより、海でも効果を期待できるライフジャケットのベスト3をこちらの記事で紹介しています。
ライフジャケットの効果
海でのライフジャケットの効果
出典:海上保安庁
海上保安庁の資料では、ライフジャケット非着用のときよりも着用していたときの生存率が1.5倍ほど高いことがわかります。
これとは別に、船舶の乗船時にライフジャケットを着用していた場合の生存率は非着用時の4倍になるというデータもあります。
波や潮の影響で大人でも泳ぐことが難しい海では、子供にライフジャケットを着用させることが大人の義務と言えます。
川でのライフジャケットの効果
過去10年間、川での水難事故件数 約2900件
うち、ライフジャケットを着用して亡くなった事例19件
全体の0.65%以下です。
RAC(NPO法人 川に学ぶ体験活動協議会)の資料によると、ライフジャケットの効果は非常に高いことがわかります。ただし、川でライフジャケットを着用する人の割合はそもそも低いことを考慮して見るべきでしょう。
川の水難事故においては、ライフジャケットの着用が死亡事故を大幅に防ぐ効果があるとは言えます。子供の水難事故の大半は川の水遊びです。川での子供の死亡事故は、ライフジャケットの着用でほぼ防げます。
子供がライフジャケットで溺れる例
- ライフジャケットを着用していたが、荒波にもまれて岩場や堤防に頭部を衝突させてしまった。
- ライフジャケットから抜け落ちて水没してしまった。
- ライフジャケットを着用していたが、顔面を下にした状態で落水し、仰向けになれなかった。
- 膨張式のライフジャケットが膨らまなかった。または膨張させるヒモを引くことができなかった。
- ライフジャケットごと障害物の下にもぐり込んでしまって、脱出できなかった。
子供がライフジャケットを着用していながら溺れる原因には、ライフジャケットの性能を上回る自然の力が働いたり、ライフジャケットの安全性能が正しく発揮されなかったりすることが考えられます。
ライフジャケットから抜け落ちて溺水するのは、抜け落ち防止の股ベルトを通していなかったことに因ります。子供用ライフジャケットを購入する際には、必ず股ベルトが付いていることを確認し、着用するときにも股ベルトを通すように心がけます。
安全性能が高いライフジャケットは、落水時に仰向けになるように設計されています。しかし、安価で安全性能を考慮していないライフジャケットは、顔面が下になったままになる粗悪品もあります。とくに小児用は回転して仰向けになる性能を持つライフジャケットを着用させたほうが良いでしょう。
膨張式のライフジャケットは、子供用には適しません。落水のパニックのなかで手動のヒモを引いて作動させるのは困難です。自動膨張式だとしても、そのときに必ず膨張するとは限りません。膨張式のライフジャケットが膨らむまでは、自力で泳がなければなりません。波の高い海や、流れの速い川では困難だと考えるべきでしょう。
ライフジャケットはごと、障害物の下にもぐり込んでしまう不運も溺水の原因になります。子供にライフジャケットを着用させても、保護者が目を離さないように注意することが原則と言えます。
ライフジャケットのせいで溺れ死んだ子供
2019年8月15日、東京都練馬区の遊園地「としまえん」にあるプールで、小学3年生の女児がライフジャケットを着用しているにもかかわらず溺れて死亡する事故がありました。
2020年6月19日に調査報告書が公開されました。
- 事故原因は特定できなかった。
- 推察:落水した際に、浮島(エア遊具)の下にもぐり込んでしまった。
- 推察:ライフジャケットの浮力のせいで、浮島の下から抜け出すことができなかった。
ライフジャケットは、浮上を妨げる障害物がない状況で効果を発揮します。しかし、ライフジャケットごと障害物の下にもぐり込んでしまうと、ライフジャケットの浮力が仇となって身体をうまく逃がすことができない危険な状態になります。
プールに限らず、川で流されて木枝の下にもぐり込んでしまったり、海で海藻の間にもぐり込んでしまったりすると、ライフジャケットの浮力のせいで引っかかって逃げられなくなる事態になることは想定できるでしょう。
この事故では、浮島の下にもぐり込んでしまったという状況から、一時的にライフジャケットごと水中に沈み込んだ可能性があります。ライフジャケットの浮力が体重に見合っていないと、ライフジャケットの浮力が足りずに水中に沈み込んでしまう事態が起こり得ます。これではライフジャケットの意味がありません。
かたちばかりのライフジャケットではなく、ちゃんと子供の体重や身体に合ったサイズのライフジャケットを着用しなければ、ライフジャケットの性能は十分に発揮されません。
安全性・信頼性で厳選した子供用ライフジャケットをこちらの記事で紹介しています。くれぐれもサイズにはご注意のうえでお選びください。
まとめ
- 水難事故での死者・行方不明者は海が一番多く、次いで川となっている。しかし、子供に限ってみれば、川での水遊びがもっとも多い。
- 川での子供の死亡事故は、ライフジャケットの着用でほぼ防げる。
- ライフジャケットを着用することで海中転落時の生存率が高くなることがわかる。
- 子供がライフジャケットを着用していながら溺れる状況には、ライフジャケットの性能を上回る自然の力が働いたり、ライフジャケットの安全性能が正しく発揮されなかったりすることが原因。
- ライフジャケットの浮力が体重に見合っていないと、ライフジャケットの浮力が足りずに水中に沈み込んでしまう事態が起こり得る。